「あの鐘~」割引適用通販の受付を先ほど終了いたしました! お申し込み下さった皆様、どうもありがとうございます。徐々にお返事していますのでお待ち下さいなー
発送の方も今週末にでもまとめてやりたいな、と。梱包している最中です。
そろそろ夏コミに向けて原稿始めないとな、と思うんですが、思うだけで日々が終わります^v^
一応この前も日記に書いた再録本と、あと何かシリーズ物の新刊を出したいなーと考えてはいるんですが……どこまでできるかなぁ……(お財布的にもね!笑
先日も日記に上げたミニ話の続きです。子供達ってタイトルに入ってるのに、いつまで経っても子供が増えない……お兄ちゃんが出てこないよ……笑
最後まで出てこなかったらタイトル変えようと思います 笑
あと1回ぐらいで終わるといいな!!
ケルピーは、妖精の中でも特に強い力を持つとされる水棲馬だ。
まだ幼いミニィアだけれど、アンシリーコートとシーリーコートの区別はきちんとつくつもりだ。ニコと妖精界に遊びに行くのもいいけれど、悪い妖精には気をつけなくてはいけないと、お母さまは口をすっぱくするほどに言っている。
でもその中でも、ケルピーだけは別なのだ。
ミニィアやお母さまがケルピーと仲良くしていることに、お父さまはあまり言い顔をしないけれど、それでもケルピーのことだけは認めてくれているのだとわかる。冗談でお父さまが宝剣を手に取った時には、ミニィアはびっくりして、お母さまは「エドガー!」と怒鳴り声を上げていたけれど。
「ねぇねぇ、ケルピー。どうしてあんまり遊びに来てくれないの?」
「あ? この前も来ただろ」
「うそ。この前じゃないもん。ずーっと、ずーっと前だったもん」
少なくともミニィアにはそう感じられた。なのにケルピーは、ちっとも信じてくれた様子は無い。
「おまえら人間は、すぐ死んじまうからな」
妖精たちのほとんどは、信じられないぐらいに長い時を生きる。猫にしか見えないニコだって、お母さまのお母さまよりもさらに長生きなのだ。
「……あたしすぐに死んじゃうの?」
「数十年なんてあっという間だろ」
わかってはいたが、妖精は優しい慰めの言葉なんてかけてはくれない。寂しくなって、視線を落としたミニィアに、けれどケルピーは気にした様子もなく言葉をかけてくる。
「ま、でもあの伯爵だってまだ生きてるからな。おまえも当分は平気だろ」
「……うん」
慰められた気はしない。
でも、下手に「大丈夫だよ」なんて言われるよりかは、どうしてか少し元気になれた気がした。
おじい様だってまだまだ元気なのだ。屋敷の中で、一番小さなミニィアが、死んでしまう心配をするなんてそんなのはおかしい。
「ねぇねぇ、ケルピー。馬の姿になって。それで、あたしのこと背中にのっけて」
気を取り直して、ケルピーがやってきたらお願いしようと思っていたことを頼んでみる。
片手でミニィアのことを楽々と持ち上げながら、ケルピーは不満そうに鼻の上にしわを寄せた。
「俺は馬じゃねぇ。誇り高き水棲馬だぞ」
「うん知ってる。だってね、ケルピーはあたしのこと落としたりしないでしょ?」
まだ危ないからと言って、ミニィアは乗馬の練習をさせてもらえない。楽しそうに馬を走らせるお兄さまを、見ていることしかできないのだ。
「ねぇお願い、ケルピー」
獰猛さで知られる水棲馬の瞳を、ミニィアはじっと見上げた。
ケルピーの瞳は、見つめていると吸い込まれそうな力を帯びている。
その魔力でもって、人間を捉え食べてしまうアンシーリーコート。そうわかってはいたが、ミニィアはケルピーを恐ろしいと思ったことは一度も無い。
だって彼は、ミニィアにとってはとても優しい妖精だ。危ないところを助けてもらったことだって何度もある。
いざとなったら逃げ出してしまうニコよりも、もしかしたら頼りになるかもしれない。そう言えばニコは拗ねてしまうだろうか。
「ケルピー。ね、お願い」
「……ったく」
つまらなさそうに、ケルピーは小さく言葉を吐いた。
ダメなのだろうか。ミニィアがそう不安に思った時、ケルピーの大きな手の平が、ミニィアの頭をぐしゃぐしゃと乱暴に撫でた。
「俺が背中に乗せるのは、おまえとリディアだけだぞ」
乳母にキレイに結んでもらった髪が、寝転んだ後のように乱れてしまったが、そんなことは気にならなかった。
たてがみが現れたかと思うと、一瞬にしてケルピーは元の馬の姿に変わる。その前に、ミニィアを地面に降ろすことも忘れなかった。比べること自体が間違っているのかも知れないが、お父様が乗っている馬よりもずっとキレイだとミニィアは思った。
どうやって背中に乗ろうかと、考えつつも見惚れていたミニィアの襟首を、ケルピーがひょいっとくわえる。かと思うと、そのまま背中に放り投げられた。投げられたはずなのにちっとも痛くないのは、ケルピーが何か魔法でも使ったからなのか。
「ほら、これでいいか?」
お母さまの言った通りだ、とミニィアは思う。
馬の背に座っているとは思えないほどの座り心地だ。大きな椅子にしっかりと腰掛けているかのような。
これなら何があったって落ちるわけはない、と思うと、顔いっぱいに笑顔が浮かんだ。
「ちゃんと走ってくれなきゃだめ!」
「注文の多い奴だ」
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2010/05/21
あぷり
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