ちょっと前に浮かんだネタです。書きたくなったので投下!
大きくなったにゃんことチビのお話ですよー
可愛い子猫の部屋へと行くと、そこにいたのはリディアではなく、今はもう大きく成長した『チビ』だった。
「やぁ、チビ。数日ぶりだね」
拾った時には片手に乗る大きさだったから、そのまま安易に「チビ」と名づけてしまったのだが、もう立派な雌猫へと成長した今、さすがに改名すべきかもしれないとエドガーは考える。
「僕の可愛い子猫が……リディアがどこに行ったかしらないかい?」
チビと同じく、リディアだって成長している。年頃の女の子になった今、子猫と表現するのは間違っているのかもしれないが、どうにも癖が抜けきらないのだ。
「ねぇ、チビ?」
「ニー」
頭を撫でながら尋ねれば、チビは心地良さそうに小さく鳴いた。
自由に屋敷を出入りしているチビは、頻繁に姿を見せることもあれば、一週間や二週間平気で帰ってこないこともある。きっと、ここ以外にもたくさんの家を持っているのだろう。何とも自由な猫だ。
「ライブラリにでも行ったのかな。最近読書にハマってるみたいでね。ちっとも僕の相手をしてくれないんだ」
猫を相手に愚痴をもらす自分は、一体なんて情けないのだろうとも思ったが、こんな愚痴は猫ぐらいにしかもらせないのだから仕方ない。
「まぁ、すぐに帰ってくるだろうけどね」
広い屋敷では、互いの姿を見つけるだけで一苦労だ。とくにリディアは、成長するにしたがって行動範囲が広がっているし、落ち着きなくあちこちをうろちょろしているため、最近は探し出すのも困難だった。
ソファに腰掛けて、ぼんやりと辺りに視線をさまよわせると、机の上に置きっぱなしになっているブラシに気がついた。リディアの物ではない。猫用のブラシだ。
「チビ。ブラッシングしてあげようか?」
暇つぶしだ。
ブラシを片手に取ってふりふりと振れば、きちんと理解しているのだろうか、チビは優雅な足取りでエドガーの元へとやって来た。
ソファにぴょんっと飛び乗り、そうして当然のようにエドガーの膝に乗ってくる。大きくなっても、昔からやることは何も変わらない。くすっと笑いながら、エドガーはブラシで背中の毛を梳かし始めた。
「気持ちいいかい?」
目を閉じて、眠る体勢に入っている。それほど気持ちいいのか。
何となくエドガーもくつろいだ気持ちになって、何も考えずに、ただ右手だけを動かしてチビの毛を梳いて行った。
扉が開いたのは、それからしばらくしてからのことだった。
「お帰り、リディア」
「エドガー? 来てたの?」
「少し前にね」
入ってきたリディアは、嬉しげに尻尾を揺らしたが、エドガーの姿を眺めると、すぐにその顔が不満げなものに変わっていった。
「リディア?」
「……何してるの?」
一瞬、何を言われたのかわからなかった。
「え? いや、チビの毛を梳いていただけだよ」
「さっきあたしがやってあげたのに!」
リディアがどうして怒るのかわからなくて、エドガーはブラシを持ったまま首を傾げた。
「いや、リディア。それは知らなかったけど……別にいいじゃないか、チビは喜んでるみたいだし」
「何よ。エドガーにばっかり甘えて!」
リディアはエドガーを―――いや、エドガーの膝の上のチビを睨み付けた。
どうやら、リディアの不満を買っているのは、エドガーではなくチビのようだ。
「あたしがさっきやってあげたばっかりなんだから、エドガーにやってもらわなくたっていいでしょ! 何でエドガーの膝に座ってるのよ」
リディアの声が聞こえていないわけではないだろうに、チビは平然とエドガーの膝に乗ったまま、のん気に欠伸を漏らす。
「聞いてるの!?」
リディアはますます怒る。
何だか、ずっと前にも、こんな光景を見ていたなとエドガーは思い出した。
リディアもチビもまだ子猫だった頃。リディアはよくチビに焼餅を焼いていたものだ。それはどうやら今も続いているらしいとわかって、思わず笑い出しそうになってしまう。
どうやら成長した今も、リディアにとって一番のライバルは、この真っ白な猫のようだとわかって。
「リディア。チビは猫なんだから別にいいじゃないか」
焼餅を焼く必要なんて無いのだと言いたかったのだが、リディアには上手く伝わらなかったらしい。
「……エドガーは、あたしよりその子の方が好きなの?」
「え?」
何でそうなる。
「いや、リディア、そういう意味じゃなくて……」
「いいわよ! じゃあ、好きなだけその子と仲良くしてればいいでしょ!」
泣きそうな顔をしながらリディアは叫ぶと、脱兎のごとく駆け出して行ってしまった。
「リディア!」
立ち上がろうとして、膝の上の錘でそれができないことに気づく。
「どいてくれ、チビ」
「ニゥ」
無理やりどけると、不満そうな声が返って来たが気にしない。
「まったく。君達の関係は昔から何も変わらないな」
チビがリディアを引っかいたり噛み付いたり、リディアがそれに対して泣き出すことが無くなったぐらいで、根本的なところは何も変わっていなかった。
それが嬉しいような、そうでないような。
「当分君のブラッシングはしてあげられないね、チビ」
ブラシを元の場所に戻してから、エドガーは慌てて部屋を出た。
可愛い子猫に、君が一番大好きだよと、抱きしめながらささやくために。
にゃんこは14~5ぐらいのイメージです。エドガーに恋愛感情を抱き始めてる頃だといいな、とか…!
大きくなってもチビとはライバルだと可愛いなぁとか思ったのです。でもチビは別にライバルだとも何とも思ってません。昔からライバル視してるのはリディアだけ。
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2008/08/05
あぷり
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